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木材解説:アコギトップ材の真打ち「アディロンダックスプルース」

アディロンダックスプルース解説

Picea rubens

この記事ではアコースティックギターの最高級モデルに採用されるアディロンダックスプルースについて解説していきます。

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アディロンダック・スプルースとは?

出典:Facebook

アメリカ東部、アパラチア山脈周辺に分布しているマツ科トウヒ属の樹木。そのうちアディロンダック山脈付近で採れる個体をアディロンダックスプルースと呼ぶ。現在では希少となっておりIUCNレッドリストのLeast Concern (LR/lc) 「軽度懸念」に指定されている。商業名は「レッドスプルース(Red spruce)」。学名は「Picea rubens」。

レッドリストとは?

国際自然保護連合が作成した絶滅のおそれのある野生生物のリストのこと。正式名は「 The IUCN Red List of Threatened Species」。

およそ5年ごとに更新され、2022年2月現在で最新のバージョンは2017年版。

Picea rubensがLeast Concern (LR/lc) に指定されたのは1994年から。

出典:wikipedia

特徴

他のスプルースと比べても小さい幹のため、製材された板材は(特にブックマッチの外側にかけて)木目が幅広く、横に走る細かな杢は出にくいので見た目での判断もつけやすい。ただし、本当に良質な個体は木目が詰まっているので一概には言えない(Collings等のハイエンドブランドに採用されている)。

ブックマッチとは?

アコースティックギターのトップ材とバック材はほとんどが2枚の木の板を張り合わせて十分な横幅を確保している。これを2ピースといい、十分な厚みのある板を真ん中でスライスして本のように開く継ぎ方のことをブックマッチと呼ぶ。これにより木目が左右対称となり美しい外観の板材を生成する。

たまに3ピースを採用しているものもあるが、その場合両端の2枚はブックマッチとなっている。

アコギの主要トップ材気乾比重
エゾ松0.47
シトカスプルース0.46
イングルマンスプルース0.41
ジャーマンスプルース0.44
アディロンダックスプルース0.42
米杉0.38
アフリカンマホガニー0.56
ハワイワンコア0.67

気乾比重は0.42でスプルースの中では軽量。その数値だけを見るとイングルマンスプルースに似ていますがその性質は全くの別物です。アディロンダックスプルース最大の特徴は強靭かつ粘りの強い振動特性で、サイドバックの特性を強力に引き出す深みのある鳴りを生み出します。

気乾比重とは?

木材を乾燥させた時の重さと同じ体積の水の重さを比べた値のことで、木の硬さや強度を示す基準の一つ。

数値が大きいほど重く、小さいほど軽い。この数値が1を上回ると水に沈みます。

世界で最も軽い木はバルサ(0.1)で世界で最も重い木はリグナムバイタ(1.3)と言われているらしいです。

ブレイシング材としても優秀

Collings、Huss&Dalton等、ハイエンドブランドの一部モデルには、トップが別の材であってもブレイシングにアディロンダックスプルースを採用しているものがあり、粘り強く強烈な響きを引き出す一端を担っています。まさに縁の下の力持ちですね。

ブレイシングとは?

トップとバックに用いられる補強材のこと。

材質、幅、高さ、削り込みの有無、配置のパターン等の要素で強度と鳴りのバランスを変える事ができ、音作りにも極めて重要なファクターとなる。

多くの場合は、トップ材と同じ木材もしくはシトカスプルースが採用される。

出典:クロサワ楽器HP

価格が高い

ジャーマンスプルース同様、価格が高く希少性も高いので採用されているモデルはかなり限られます。ちなみに、木材として売られているアディロンダックスプルースの相場はジャーマンスプルースの約2.5倍ぐらいします。シトカスプルースと比べると約9倍です。

戦前のモデルに採用されている

1940年代前半(戦前)のMartinやGibsonはトップにアディロンダックスプルースを使用しており、鳴りの成長も相まって本当に感動するほど素晴らしい鳴りを提供してくれます。当然ながら人気が高く、年々数は減っていく一方なので市場でも滅多にお目にかかることはできません。見かけたら是非試奏してみてください。

アディロンダックスプルースの軽量かつ強靭な特性ゆえに、戦時中に乱伐され飛行機などの兵器へ使われたため、第2次世界大戦以降は楽器に使える数が激減してしまったのだそうです。

良いグレードの見分け方

アディロンダックスプルースの中にもグレードの低い材が使われていることがあります。前項で木目の幅が広い特徴があると記述しましたが、ブックマッチの真ん中あたりは細かく詰まっていて、外側にいくほど少しずつ広がっていっているものはOKです。

しかし、特に低価格帯に採用される、全体的に木目が粗い個体は要注意。実際に鳴らしてみると、特有の太い音色はなんとなく分かるのですが音の輪郭がぼやけた鳴り方なのです。とても良材とは思えないようなやぼったい音色で力強さはあまり感じませんでした。なんだか水分も十分に抜けてないような、何かを引きずっているような鳴りでシーズニングも甘いような感じがします。

シーズニングとは?

切り倒したばかりの生木は手で触るとぐっしょり濡れるほど水分を含んでいて、そのままでは膨張や収縮により寸法が変わり、強度も低いため乾燥する必要がある。

含水率を自然乾燥で15%程度にまで落とし、さらに人工乾燥で5%前後にして最終的に6〜7%前後に調整された材がギターに使われる。この含水率を調整する最終段階のことをシーズニングと言います。

後でご紹介する代表的なモデルならばどれも信頼できるクオリティなのですが、中国製で安価に作られているようなモデルは、必ず弾いて音を確かめたうえで検討してみてください。

相性の良い材

どんな材と組み合わせてもその木材の音響特性を引き出した強力な鳴りが得られるので、サイドバックは何を使っても良いと思います。私自身の好みで言うなら、ローズウッド系の木材と組み合わせたときのダークできらびやかでパワフルな響きは絶品です。マホガニー系と組み合わせるのも良いですが、どうせならホンジュラス産以上のクラスじゃないともったいない気がします。

アディロンダックスプルースを使用している代表的なモデル

アディロンダックスプルースを採用している代表的なモデルはこんな感じです!私が実際に鳴らして特に良さが分かりやすかったモデル3機種に絞りました。

Gibson J-45 Red spruce 

J-45 standardも勿論素晴らしいサウンドです。ホンジュラスマホガニーを採用し始めてからは特に良い音になりました。しかしこのレッドスプルーストップはさらにもうワンランク上の力強さ、音の芯の太さを持っています。戦前のギブソンを彷彿とさせる実に味わい深い音色で、弾き込んで音を育てる楽しみもまた格別です。

出典:イシバシ楽器17ショップ

こんな人におすすめ

  • 手軽にアディロントップの鳴りを体感したい
  • パワフルなストロークサウンドのギターを探している

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Collings OM2H A

抱えやすいオーケストラサイズからは到底想像できないハリのある力強い鳴りが魅力のCollings OM2H。ヴィンテージマニアの故ビル・コリングスが愛した戦前のOMモデルです。その中でもひときわ人気の高い仕様であるアディロンダックスプルーストップ!私がこのモデルと出会ってから10年以上経ちますが今でも最高峰のOMだと思います。それほどに重厚で力強く響き渡る低音は魅力的なのです。数あるアコースティックギターの中でも、歳を重ねても色褪せない、むしろ輝きを増して放ち続けるギターのひとつだと思います。

こんな人におすすめ

  • 人生最後に買う一本を検討中
  • ボディサイズはOOOぐらいがいい

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Martin D-28 Authentic 1937

Martin D-28 Marquis、Golden Eraが廃盤になり、Martin最高峰ラインナップの後継機種として誕生したAuthenticシリーズ。ネックにはプリミティブなTバー・ロッド、接着剤にはニカワを使用して当時の製法と仕上げ精度に徹底的にこだわったモデル。サイドバック材はハカランダの代わりに甘めのサウンドが特徴のマダガスカルローズウッドを採用。ナット幅44.5mmで太めのソフトVシェイプ、ジェニュイン(正真正銘の)・マホガニーネック(ずっと気にはなっていたんですがこれってキューバンマホガニーの事でしょうか…??知っている人いたら是非教えてください。笑)から生まれる圧倒的な存在感のサウンドは圧巻です。迫力と繊細さを兼ね備えるドレッドノートの最高機種です。

こんな人におすすめ

  • 人生最後の一本を検討中
  • D-45のような豪華絢爛なルックスよりも素朴で古風なスタイルが好き

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アディロンダックスプルースの深みに酔いしれる

私が初めて触れたアディロントップのモデルはMartin D-28 Marquisでした。

どこまでも深く重厚な低音と美しいキラキラと輝くような高音、そしてまるで大砲のような音圧。

当時感じた「ただものではない感」は今でも鮮明に覚えていて、しばらくスタンダードラインのD-28はもう弾けないくらいに感動したものです。

あくまで個人的な意見ですが、アディロンダックスプルースは最強のトップ材です。

 

 

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