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木材解説:柔の音色を生み出す魅惑の「シダー」

ウェスタンレッドシダー解説

Thuja plicata

この記事ではトップ材としてよく用いられる米杉(ウエスタンレッドシダー)について解説していきます。

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皆さんはギターを選ぶ時、何をポイントにして見ていますか? 特に音色にフォーカスする場合、木材選びは非常に重要なポイントとなります。 アコースティックギターは音に関わる大部分が木で出来ていますので、それ ...

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米杉とは?

出典:Wikipedia

米杉(ベイスギ)は、北アメリカ西部に分布しているヒノキ科クロベ属の常緑針葉樹。スギ科ではない。

加工性がよく、特にウッドデッキ材として高い人気を誇っている。メーカーのスペックシートには単にシダーと表記されていることも多いが商業名は「ウエスタンレッドシダー / Western Red cedar」。学名は「Thuja plicata」。

クラシックギターにも多く採用されていて現在では希少となっており、 レッドリストLeast Concern (LR/lc) 「軽度懸念」に指定されている。

レッドリストとは?

国際自然保護連合が作成した絶滅のおそれのある野生生物のリストのこと。正式名は「 The IUCN Red List of Threatened Species」。

およそ5年ごとに更新され、2022年2月現在で最新のバージョンは2017年版。

Thuja plicataがLeast Concern (LR/lc) に指定されたのは1994年から。

出典:wikipedia

特徴

写真の通り大きな樹木で木目は均等によく詰まっています。

心材は茶色〜焦げ茶色の濃い褐色ですが辺材は明るい黄色〜白色に近く、見た目にも濃淡がはっきりしているのが特徴。ギターに使われているのはほとんど心材のみなのでシダーといえべ茶色のイメージですよね。

心材/辺材とは?

出典:コトバンク

ざっくりと説明すると丸太の芯の部分が心材。樹皮に近い部分が辺材。

心材の方が強度が高く柱等の建材に利用され、辺材は木の断面により美しい模様が楽しめるため装飾材として用いられることがあります。

適度な粘りと強度が重要になってくるギターのトップ材としては、なるべく心材に近くて真っ直ぐ柾目にカットされた材が適しています。(しかし、柾目の木取りは板目と比べて1本の丸太から取れる木の板がかなり少なくなるため、高価となります。)

気乾比重は主要なアコギ材のなかで最も軽い0.38。木肌は粗め、軽快で柔らかく強度は低いですが耐久性が高い性質を持っています。

アコギの主要トップ材気乾比重
エゾ松0.47
シトカスプルース0.46
イングルマンスプルース0.41
ジャーマンスプルース0.44
アディロンダックスプルース0.42
米杉0.38
アフリカンマホガニー0.56
ハワイワンコア0.67

気乾比重とは?

木材を乾燥させた時の重さと同じ体積の水の重さを比べた値のことで、木の硬さや強度を示す基準の一つ。

数値が大きいほど重く、小さいほど軽い。この数値が1を上回ると水に沈みます。

世界で最も軽い木はバルサ(0.1)で世界で最も重い木はリグナムバイタ(1.3)と言われているらしいです。

音色の特徴

角の取れた、素朴であたたかみのある音色がします。また、ピッキングへの反応が素早いのも魅力で、軽いタッチでも十分に振動を伝達させてくれるので広範囲に音を響かせてくれます。反面、もっと大きな音を出そうとして思い切り弾いてもそこまで音量は変わらないのでどちらかというと指で弾くスタイルに最適です。

相性の良い木材

重いローズウッド系と組み合わせると、音の粘りが少なくなりすっきりと澄み切った音色が楽しめます。マホガニー系との組み合わせではギター自体が軽くなり、誰でも簡単に大きな音量で綺麗な音色を鳴らすことができます。Taylorではブラックウッドと組み合わせた320シリーズがありますが、こちらはマホガニーとローズウッドの特徴を足して2で割ったようなイメージですね。

クラシックギターに採用率が高い

アコースティックギターではタッチの軽さから主にフィンガーピッキングスタイルのモデルに採用されていますが、その数はスプルースに比べて圧倒的に少ないです。しかし、クラシックギターにはおよそ2本に1本程の割合で採用されています。

シダーをトップ材として使用するようになったのは1960年代にJose Ramirez(ホセ ラミレス)3世がクラシックギターのトップ材に初めてウエスタンレッドシダーを採用したことからはじまりました。Jose Ramirezはクラシックギター界で世界一有名なブランドで、当時松以外の木材を使用する等ありえなかったので一気に広まったのでしょう。さらにクラシックギターは基本的に指弾きなので、シダーの良さが伝わりやすかったんだと思います。

米杉を使用している代表的なモデル

シダートップのアコギはそもそもバリエーションが少ないのですが、その中でも特に楽器店でよく見かける&人気の高いモデルをご紹介します。

ASTURIAS SOLO STANDARD/C 

九州・久留米で約15人の職人が在籍するギターメーカーASTURIAS。サイドバックはインディアンローズウッドを採用。ASTURIAS特有のカチッとしたギター作りがシダートップとの相性抜群で、硬めの設計に軽量なシダーがボディ全体を響かせます。サウンドホールを覗き込んで「あー!」と声を入れるとトンネルの中にいるようなリバーブを伴って大音量で反響します。

出典:ASTURIAS公式サイト

こんな人におすすめ

  • とにかく明るい音色で音量の大きなギターが好き
  • ソロギターもピック弾きも両方やる

「SOLO STANDARD/C」のサウンドチェック

K.Yairi WY-1

国産老舗ギターブランドK.Yairi。ラインナップの中では数少ないエレアコモデルで、サイドバックにはインディアンローズウッドを使用。クリアーかつウォームなシダー特有の心地よい響きと、搭載しているピックアップ「L.R.Baggs Stage Pro Element」の相性が抜群に良い。ダイレクトカップルドブリッジを採用していて十分なテンションを確保。しっかりと響きます。艶消し塗装、Alavarezロゴ、ウッドバインディングに仕様変更されたバリエーションモデルWY-1 Reissueはさらに優しい音色がします。

出典:K.Yairi公式サイト

こんな人におすすめ

  • 生音は抜けがよくてかつあたたかみのある音色が好き
  • ラインサウンドもあたたかみのある音色が好き

「WY-1」のサウンドチェック

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Morris S-92 III

老舗国産ギターメーカーMorris。ソロギタープレイヤーに向けて広めのナット幅とブレイシング設計を見直されたSシリーズより、S-92 III(第3世代モデル)。サイドバックにはアフリカンマホガニーを使用しており、ギター自体が驚く程軽く軽いタッチでも十分すぎる音量が得られるのが魅力。抜けの良いウォームな音が広がる、プレイヤーフレンドリィなモデル。弦ピッチが広いのでミスタッチしづらいのも嬉しいですね。

出典:Morris公式サイト

こんな人におすすめ

  • ギターは指弾きがメイン
  • 立ち上がりが良くて軽く触れただけでもしっかり鳴ってくれるギターが好き

「S-92 III」のサウンドチェック

Furch Yellow Gc-CR

チェコのギターメーカーFurch。Yellowはナット幅が45mmと広めにつくられたフィンガースタイル、Greenはポピュラーな43mmナット幅でオールラウンドに活躍します。ナット幅が広い方がネックが太めになり、音が力強くなるので(私の好みですが)シダーとの相性は良いと思います。昔からコストパフォーマンスに優れていたFurchですが、この価格でしっかり大音量を鳴らすことができるのはやはりすごいですね。サイドバックはローズウッドを採用。倍音はやや控えめです。

こんな人におすすめ

  • なるべく抱えやすいボディシェイプでジャンボサイズと同等の音量が欲しい
  • 重くて太い音よりもすっきりとした抜けの良いクリアーな音色が好き

「Yellow Gc-CR」のサウンドチェック

まるで木の香りが漂ってきそうな味わい深い音色の米杉

シダートップはギター本来の優しさ、木のぬくもり、透明感を引き出すには最良の材だと思います。

焦げ茶色のアンティークチックなルックスもかっこかわいくて素敵ですし、新品ながらオールドギターのような風格を纏わせることができる珍しい材です。

隠れたファンの多いウエスタンレッドシダー。もし気になっている方は是非検討してみてはいかがでしょうか。

 

 

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