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木材解説:多くの楽器に最適解とされる高級トップ材「ジャーマンスプルース」

ジャーマンスプルース解説

Picea excelsa

この記事では高級モデルや最高級クラシック楽器にも採用されるジャーマンプルースについて解説していきます。

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ジャーマン・スプルースとは?

出典:Wikipedia

ヨーロッパ中央部のアルプス山脈地域に分布しているマツ科トウヒ属の樹木。必ずしもドイツ産ということではないらしく、商業名はヨーロピアンスプルース(European Spruce)。学名は「Picea excelsa」。

アルプス山脈とは?

オーストリア・スロベニアを東端とし、イタリア・ドイツ・リヒテンシュタイン・スイス各国にまたがり、フランスを南西端とする多くの国にまたがっているヨーロッパの山脈。

特徴

目が細かく詰まっている個体が多く、淡黄〜黄色に焼けていく特性を持ちます。

アコギの主要トップ材気乾比重
エゾ松0.47
シトカスプルース0.46
イングルマンスプルース0.41
ジャーマンスプルース0.44
アディロンダックスプルース0.42
米杉0.38
アフリカンマホガニー0.56
ハワイワンコア0.67

気乾比重は0.44とシトカとアディロンの中間ほど。引き締まった抜けが良い音色かつ倍音を多く含み、高級アコースティックギターに多く採用されるだけでなく、高級クラシックギターにはほとんどがドイツ松(ジャーマンスプルース)を使用しています。

気乾比重とは?

木材を乾燥させた時の重さと同じ体積の水の重さを比べた値のことで、木の硬さや強度を示す基準の一つ。

数値が大きいほど重く、小さいほど軽い。この数値が1を上回ると水に沈みます。

世界で最も軽い木はバルサ(0.1)で世界で最も重い木はリグナムバイタ(1.3)と言われているらしいです。

シトカスプルースと比べて比重が低いためか強度がやや弱いとされていますが、弾性係数や収縮率はジャーマンスプルースの方が勝っており、狂いにくく軽くてよくしなるので楽器用として非常に優れた木材です。それはギターよりも古い歴史を持つバイオリンやチェロの表板、ピアノの音響板等にも最良の材として扱われていることからも証明されています。

弾性係数とは?

木材に曲げの力を加えた際の「縦歪みやたわみ」の程度を表す数値のことで、木の強度を示す基準の一つ。

数値が大きいほど曲げ強度が高いとされている。

シトカスプルースは100.1~112kg/cm2なのに対し、ジャーマンスプルースは113~125kg/cm2と明らかに高い数値を出している。

収縮率とは?

木材が乾燥した際に何%収縮するかを表す数値のことで、木の狂いやすさを示す基準の一つ。

数値が大きいほど反りや曲がりが生じて狂いやすいとされていてアコギの悩みのタネでもある割れにも繋がる。

例として全乾状態半径方向の収縮率(※)がシトカスプルースは4.1~5.0%なのに対し、ジャーマンスプルースは3.1~4.0%であり狂いにくい事が分かる。

※…生木状態から木の水分を限りなく抜いた状態が全乾状態。半径方向はトップ材でいう横幅の方向。下記図を参照。

出典:道総研・森林研究本部

シトカスプルースとの違いは音の輪郭がくっきりして低音〜高音のピークが伸び、鋭いレスポンスとパンチのある音色に近づくといった印象です。

相性の良い材

ローズウッド系ならレンジの広さを遺憾なく発揮してくれるため、生き生きとした力強い鳴りが期待できます。ただし、ココボロ等の硬くて重い材と組み合わせる場合、出音がかなりハードになる為、振動効率を上げる設計にしていなければ扱いづらいかもしれません。

マホガニー系との相性も良く、本来マイルドで軽快なサウンドになりがちですがジャーマンスプルースの力でしっかりとアタック感が出て耳あたりの良い音色に昇華します。

ジャーマンスプルースは比重の高すぎない材と組み合わせればほぼ間違いなく素晴らしい音色を提供してくれる優れたトップ材です。

価格が高い

低価格帯のモデルでジャーマンスプルースを使用しているモデルはほとんどありません。アディロンダックスプルースに次ぐ一部の高級モデルや限定物のカスタムモデル、オーダーをしない限り良質な個体を手に入れることはできないでしょう。1970年代前半のMartin D-41、42、45にも使用されており、採用モデルの価格が高いという事が唯一の欠点ですね。

ジャーマンスプルースを使用している代表的なモデル

最後に、ジャーマンスプルースを使用されている代表的なモデルをご紹介して終わりたいと思います。気になるモデルは是非チェックしてみてくださいね!

ASTURIAS SOLO HERRINGBONE 

九州・久留米で約15名の職人によってギター製作をしている少数精鋭ブランド「ASTURIAS」。フィンガースタイルに最適なSOLOシリーズの中堅クラスモデルであるSOLO HERRINGBONEはジャーマンスプルース単板トップにインディアンローズウッド合板サイドバックの組み合わせとなっています。カラッとした鋭い立ち上がりから音の粒が綺麗に整う美しい響きが魅力です。ジャーマントップのモデルの中でもおそらく最安値に近いモデルだと思います。

こんな人におすすめ

  • 手軽にジャーマントップの鳴りを体感したい
  • ソロギター向きのギターを検討している

「ASTURIAS SOLO HERRINGBONE」のサウンドチェック

ASTURIAS D EMBLEM

ASTURIAS Dシリーズの上位モデルであるD EMBLEMはジャーマンスプルース単板トップにインディアン・ローズウッド単板を組み合わせた王道モデル。豪華な装飾が施されていてD-42を彷彿とさせるデザインパターンにフラワーポットインレイがとても美しいです。鳴りはドシッとした迫力の低音を含んだドレッドノートサウンドにジャーマンらしいタイトで抜けるクリアーな倍音。シトカスプルースとは明らかに違う響きを感じることができるドレッドノートモデルです。

こんな人におすすめ

  • 迫力のジャーマントップサウンドを体感したい
  • 長く使っていけるアコースティックギターを検討している

「ASTURIAS D EMBLEM」のサウンドチェック

Collings OM-2H G

Martinを越えるハイエンドブランドとして名高いアメリカのギターメーカー「Collings」。その人気定番モデルOM2HのGerman topモデルがOM-2H Gです。とにかく聴いていただければ良さが伝わります。強力な音圧、豊富な倍音成分、立ち上がりのスピード感、どれをとっても珠玉の逸品と呼ぶに相応しいクオリティ。その凄すぎる音色はほぼ全てのギタリストを魅了します。価格もすごいのですが、正規輸入品でファーストオーナーの方には永久保証が付くのと、この音色は他のギターでは替えが効かないので十分にその価値があります。

こんな人におすすめ

  • アコースティックギター最高峰の1本を検討している
  • ヴィンテージマーティンを越える1本を探している

「Collings OM-2H G」のサウンドチェック

山野楽器 ロックイン
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ワンランク上のサウンドを目指すならジャーマンスプルースがおすすめ

定番のシトカスプルースも良いけど、もう少し弾きごたえが欲しい…、とお思いならばジャーマンスプルースを採用したアコギを一度手にとってみてはいかがでしょうか。

鋭いレスポンスで弾き手の体に伝わってくる一味違った響きにきっと満足できるはずです。高級材のため採用しているモデルも高価になりますが、それだけの価値は十分あります。

特にあたたかみのある音色を出せるマホガニー系や硬すぎず粘りのある音色を持つインディアンローズウッド等を組み合わせたモデルはサウンドバランスも良くておすすめです。

 

 

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