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木材解説:低音ドシッと高音きらびやかな「インディアンローズウッド」

インディアンローズウッド

Dalbergia latifolia

この記事ではアコギ材として優秀かつポピュラーなインディアンローズウッドについて解説していきます。

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インディアンローズウッドとは?

Dalbergia latifolia

マメ科ツルサイカチ属Dalbergia)16樹種の中の1種で、樹高24m、胸高直径1.5mに達する品種。イースト・インディアンローズウッド(East Indian Rosewood)とも呼ばれています。

カットや切削をした際にバラのような甘い香りがすることからローズウッドという通称がつきました。

インド西部が原産ですが、現在ではインドネシアを中心とする東南アジアでも木材の産業として植林されているためローズウッドとしての供給量が最も多い品種。

本紫壇(こちらも通称インディアン・ローズウッド/学名「Dalbergia sissoo )やギターに使われる他の品種に比べると軽く柔らかいのが特徴。

省略されて単に"ローズウッド"と呼ばれることもある

定番材あるあるで、メーカースペック表記や口語では単に「ローズウッド」として扱われていることが多々あります。なので、ローズウッドと言われたらイーストインディアンローズウッドだと思ってください。

ちなみに、1960年代以前までは「ローズウッド」といえばハカランダ(ブラジリアンローズウッド)のことだったそうな。

インディアンローズウッドの特徴

場所や個体により色の濃淡が激しく、心材は赤紫〜黒に近い茶系、辺材は白または黄白色。ダークな色の個体は特に人気が高く、木目選定は頻繁に行われる。

心材/辺材とは?

出典:コトバンク

ざっくりと説明すると丸太の芯の部分が心材。樹皮に近い部分が辺材。

心材の方が強度が高く柱等の建材に利用され、辺材は木の断面により美しい模様が楽しめるため装飾材として用いられることがあります。

適度な粘りと強度が重要になってくるギターのトップ材としては、なるべく心材に近くて真っ直ぐ柾目にカットされた材が適しています。(しかし、柾目の木取りは板目と比べて1本の丸太から取れる木の板がかなり少なくなるため、高価となります。)

気乾比重は0.85で、マホガニー系と比較すると重めだがローズウッド系の中では最軽量。程よく柔軟性があり湿度の変化にも強い。

アコギの主要サイドバック材気乾比重
アフリカンマホガニー0.56
ホンジュラスマホガニー0.66
インディアンローズウッド0.85
マダガスカルローズウッド1.12
ココボロローズウッド1.20
ホンジュラスローズウッド0.94
ブラジリアンローズウッド0.98
ビッグリーフメイプル0.55
ハワイアンコア0.67
サペリ0.65
ウォルナット0.62
オヴァンコール0.80

気乾比重とは?

木材を乾燥させた時の重さと同じ体積の水の重さを比べた値のことで、木の硬さや強度を示す基準の一つ。

数値が大きいほど重く、小さいほど軽い。この数値が1を上回ると水に沈みます。

世界で最も軽い木はバルサ(0.1)で世界で最も重い木はリグナムバイタ(1.3)と言われているらしいです。

指板やブリッジ材としても最適

適度な硬さがあり耐久性が高いため、指板やブリッジにも多用されます。

主に高級機種に使用されるエボニーよりも軽くて粘りがあるので比較的甘めなサウンドです。

インディアンローズウッドの音色

低音域は重心の低いドッシリとした響きで、高音域も美しいキラキラとした鳴り。倍音成分が豊富で、レンジ(音域)が広いのが特徴です。

その分、中音域はマホガニー系よりも控えめまとまる感じではなく広がるような音の出方が特徴です。

重めの木材なので、しっかり鳴らすことができれば力強く遠くまで音を響かせる音圧が得られます。

硬すぎず適度な柔らかさを持っているので、甘い響きを出すこともできてオールジャンルで使いやすい材です。

年々数が減少していて代替材が積極的に導入されている

ギター用材に限らずとても人気の高いインディアンローズウッドは、2017年1月2日から2019年11月26日までワシントン条約の附属書IIに指定され、輸出入に規制が掛かっていました。

ワシントン条約とは?

絶滅のおそれがある野生動植物の存続を脅かすことがないよう、国際的な取引(輸出入)を規制する条約。正式名称は絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約( Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora)」。採択された地がワシントンであったため通称ワシントン条約、または英名の頭文字をとってCITES(サイテス)と呼ぶ。規制の具合によって附属書I〜IIIに分類される。

  • 附属書I
    • 絶滅のおそれがある種。商業取引が規制されており、各国の政府機関(日本=経済産業省)による輸出入許可証が必要。ハカランダ(Dalbergia nigra)は1992年8月に附属書Iに指定されているため、大規模な制限がかかっている。
  • 附属書II
    • 絶滅のおそれは無いが、違法な手段で捕獲や採取、取引が行われないために掲げられる。輸出入の際に合法的に手に入れたことを証明する許可証が必要。
  • 附属書III
    • 世界的には絶滅のおそれが少ないが、その地域内で絶滅のおそれがある種が揚げられる。主に商業目的のための国際取引の制限の協力を求めるものである。附属書IIIに掲げられた場合、輸出国の輸出許可書または原産地証明書(附属書IIIの協力を求めた国以外である証明)等が必要。

現在は輸出入規制が緩和されていますが、レッドリスト「応急種(VU)」に指定されているため、かつてのように使い続ければまた規制を余儀なくされるかもしれません。

近年ではオヴァンコールやグラナディロ等の代替材が登場し、注目を集めています。

レッドリストとは?

国際自然保護連合が作成した絶滅のおそれのある野生生物のリストのこと。正式名は「 The IUCN Red List of Threatened Species」。

およそ5年ごとに更新され、2022年2月現在で最新のバージョンは2017年版。

出典:Wikipedia

インディアンローズウッドを使用している代表的なモデル

最後に、インディアンローズウッドを使用した代表的なモデルをご紹介します。個人的にかなり悩みましたが厳選して6機種に絞りました。

YAMAHA FG830 / FS830

3万円台の低価格帯で「シトカスプルース単板トップ&インディアンローズウッド合板サイドバック」を使用したおすすめの組み合わせ。

太く重心の低い低音ときらびやかな高音が特徴でサウンドバランスが良いので、弾き方やジャンルに囚われず演奏できます。

とにかく音の迫力を求める方には少し大きめのFG830、体へのフィット感や抱えやすさを求める方にはFS830がおすすめ。

こんな人におすすめ

  • 低価格なモデルがいいけど音に妥協はしたくない
  • メインは別で用意してサブとしても使えるギターが欲しい
  • やりたいジャンルは決まっていないけどギターを始めてみたい

Taylor 214ce rosewood

アメリカでトップシェアを誇るTaylorのメキシコ製モデル214ce rosewood。

シトカスプルース単板×インディアンローズウッド合板で、Taylor独自のクリアーな響きにレンジの広さがプラスされた生鳴り。

ローノイズ&ハイパワーで優秀なピックアップシステム、ES2を搭載。ライブに即戦力で使える抜群の信頼性を誇るエレアコをこの価格で手に入れられるのも魅力的です。

出典:Taylor Guitars Japan

こんな人におすすめ

  • エレアコだからといって生音を犠牲にしたくない
  • 買ってすぐ使える即戦力のエレアコを探している

「214ce rosewood」のサウンドチェック

K.Yairi DY-28

老舗国産ギターブランドK.Yairiが製作する、シトカスプルース単板トップ&インディアンローズウッド単板サイドバックを採用したモデル。

Martin D-28と同等のスペックを持ちながら10万円以上の低価格を実現。さらに永久品質保証付きで安心して使い続けることができる、まさに驚異的なコストパフォーマンスと充実しすぎているアフターフォロー体制。

サウンドは国産らしい端正で潤いのある綺麗な倍音。指弾きやソロギターとの相性も抜群で、細めのネックは手の小さい方にも弾きやすく演奏性も素晴らしい。

こんな人におすすめ

  • 一生使い続けられるギターを探している
  • 国産で安心して長く使えるモデルがいい
  • Martinは憧れだがもっと手頃に同等のスペックを持つギターが気になる

Martin D-28 Standard / 000-28 Standard

ギタリスト憧れの的でもあり、国内売上トップクラスの定番モデルMartin D-28 Standard。ギターの神様Eric Claptonも愛用する000-28の現代バージョン000-28 Standardも2018年以前の仕様と比べて音圧が格段に上がったので合わせておすすめです。

材は良質な「シトカスプルース単板×インディアンローズウッド単板」の黄金コンビ。重心の低い低音と美しい高音、Martinらしいカラッと乾いた「これぞアコースティックギター!」と唸らずにはいられない珠玉のトーン。実際に音を聴けばこの値段の価値がよく分かるはずです。

ちなみに、現在新品税込価格が100万円を越える最上位機種D-45 Standardに使われているシトカスプルースとインディアンローズウッドは最高グレードの物を使用しており、さらに異次元の鳴りを体感することができます。

出典:Martin Club Japan

こんな人におすすめ

  • 一生使い続けられるギターが欲しい
  • 一度でいいからMartinを手にしてみたい
  • 伝説的なアーティストが愛用していたモデルを弾いて充実したアコギライフを送りたい

「D-28 & OOO-28」のサウンドチェック

ビギナーにはインディアンローズウッドがおすすめ

シトカスプルースとインディアンローズウッドは理想的な組み合わせとして、ビギナーからベテランまで幅広い方に好まれています。

私も、おすすめを聞かれた時はとりあえずサイド&バックにローズウッド系を使っているモデルを推します。

その理由は、

  • しっかりした低音が出てくれること
  • 高音域と低音域がはっきり分離してくれること
  • 音域が広くて表現力が高いこと

の3つです。

供給できる量も多いのでグレードによって価格を安く抑えることができるのも魅力的。ビギナーの方にも勧めやすいですし、表現力が高いということは上達の手助けにもなります。

ギター選びに迷ったら上記でご紹介したモデルを是非検討してみてください。

 

 

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