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木材解説:軽快でクリアーな鳴りの「アフリカンマホガニー」

アフリカンマホガニー

Khaya spp.

この記事ではトップ、サイド&バック、ネックに主に使われるアフリカンマホガニーについて解説していきます。

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アフリカンマホガニーとは?

Khaya ivorensis

西アフリカから中央アフリカにかけて広く分布しているセンダン科カヤ属の3樹種。学名はまとめて「Khaya spp.」と表記されることもあります。

グレードの高い純正のマホガニーに酷似しているため、マホガニーの代替材として頻繁に使用されています。ちなみに、似ているのは見た目のみで、性質はかなり違うため注意。

センダン科カヤ属の3樹種とは?

  • 通称「アフリカマホガニー」(学名「Khaya ivorensis」)
    • マダガスカルを中心とした西アフリカに分布するセンダン科アフリカマホガニー属の植物。写真からも分かる通り、非常に背の高い大木。最も供給量が多い。
  • 通称「ドライマホガニー」(学名「Khaya senegalensis」)
    • 中央アフリカに分布するセンダン科アフリカマホガニー属の植物。
  • 通称「カヤ」(学名「Khaya grandifoliola」)
    • ベナンやコンゴに分布するセンダン科アフリカマホガニー属の植物。

アフリカンマホガニーの特徴

辺材は淡黄褐色で、心材は淡桃褐色〜濃赤褐色。リボン杢が出やすい。やや重硬で木肌は粗く、耐久性が高いのが特徴。家具やドア、内装材にもよく使われます。

リボン杢とは?

リボン杢の例

柾目に挽かれたマホガニーやサペリは上記のような縞模様の杢が出やすい。光の当たり加減により暗い部分と明るい部分が立体的に浮き沈みしてとても美しいです。

比重は0.56。硬めの木材の中では軽量で供給量も安定しているため、多くのアコギにネック材として採用されています。しかしグレードの低いものは狂いが出やすく、シーズニングがきっちりされていないと扱いづらいため注意が必要です。(新品売価で10万円未満モデルは特に)弾いたあとはなるべく弦を緩めるようにしましょう。

アコギの主要サイドバック材気乾比重
アフリカンマホガニー0.56
ホンジュラスマホガニー0.66
インディアンローズウッド0.85
マダガスカルローズウッド1.12
ココボロローズウッド1.20
ホンジュラスローズウッド0.94
ブラジリアンローズウッド0.98
ビッグリーフメイプル0.55
ハワイアンコア0.67
サペリ0.65
ウォルナット0.62
オヴァンコール0.80

気乾比重とは?

木材を乾燥させた時の重さと同じ体積の水の重さを比べた値のことで、木の硬さや強度を示す基準の一つ。

数値が大きいほど重く、小さいほど軽い。この数値が1を上回ると水に沈みます。

世界で最も軽い木はバルサ(0.1)で世界で最も重い木はリグナムバイタ(1.3)と言われているらしいです。

年々数が減少している絶滅危惧種

アフリカンマホガニーは人気が高く供給量がとても多いですが、実はその全てがレッドリスト「応急種(VU)」に指定されています。つまり、このまま同じペースかそれ以上のペースで消費されていくと絶滅の危機に瀕してしまう可能性があり、もしかすると近い将来ワシントン条約で輸出入規制が掛かってしまうかもしれません。なので、各ギターメーカーはアフリカンマホガニーの代替材としてサペリやセレクテッドハードウッド等を積極的に採用しています。

レッドリストとは?

国際自然保護連合が作成した絶滅のおそれのある野生生物のリストのこと。正式名は「 The IUCN Red List of Threatened Species」。

およそ5年ごとに更新され、2022年2月現在で最新のバージョンは2017年版。

出典:Wikipedia

アフリカンマホガニーの音色

タッピングすると抜けの良いカランとした音がするホンジュラスマホガニーに対し、アフリカンマホガニーはポコポコ、コンコンという鳴り方で比較的甘めな音がします。

実際に鳴らしてみると倍音成分は少なめですっきりしており、明るくて軽快な音が特徴です。良くも悪くも粗めなサウンドで、ブルージィなフレーズを弾くのにピッタリです。シダーと組み合わせるとなんとも言えない軽快で抜け良く、心地よいトーンが出るのでおすすめです。

トップ材にも採用される

ネック、サイドバックのみならずトップ材として使われることも珍しくなく、Martin 00-17をはじめとしたオールマホガニーモデルは戦前からありました。その音色はまさにマホガニーの魅力あふれる軽やかで飾り気のない真っ直ぐな音色。素朴で優しく、荒々しくも耳あたりの良いトーン。レスポンスの良さも素晴らしく指で弾くのに最適です。

アフリカンマホガニーを使用している代表的なモデル

アフリカンマホガニーを使用しているモデルはとても多く、挙げ始めるとキリがないので個人的に良さが分かりやすいと感じたモデルを選出しました。

YAMAHA FG820

1965年頃に日本で生まれた最初のフォークギターFG180とFG150。様々な仕様変更を繰り返しながら現代まで進化し続け、今では生産拠点を中国工場へ移しハイコストパフォーマンスな初心者向けのギターとして常に安定した人気を誇るYAMAHA FGシリーズの最新機種です。FG820はマホガニーサイド&バックを採用しており、明るくてきらきらとした音色が特徴。ちなみにバリエーションモデルのFG850はオールマホガニー仕様でさらに抜けの良いサウンドです。

出典:サウンドハウス

こんな人におすすめ

  • マホガニーのサウンドを手軽に体感したい
  • これからギターを始めたい

Martin 000-15M

世界的アコースティックギターメーカーMartinが製作している、女性シンガーソングライターにも人気の高いオールマホガニーモデル000-15M。オールマホガニーのオーディトリアムモデルは指弾きがとてもよく合うのですが、やや大人しめのキャラクターのモデルが多いですよね。もう少し音量が出せればいいのになぁと思っているあなた。この000-15Mはオーディトリアムでありながらロングスケールを採用しており、指弾きで十分な音圧が出てくれるのでおすすめですよ。

出典:サウンドハウス

こんな人におすすめ

  • 明るくて軽快な音色が好き
  • 抱えやすいサイズで大きな音量が出るギターを探している

「000-15M」のサウンドチェック

Martin D-18 Standard

不動の人気を誇る定番機種Martin D-28も良いですが、マホガニー・サイド&バックのD-18は音の分離が非常に良く、ライブにもレコーディングにも最適な音圧を持っています。バインディングはシンプルにブラックでまとめあげられており、洗練された印象。玄人好みのシブい逸品です。

出典:サウンドハウス

こんな人におすすめ

  • どんなジャンルにも使える素直な音色のアコギが好き
  • 音色には重厚感よりも透明感が欲しい

「D-18 Standard」のサウンドチェック

アフリカンマホガニーはほとんどのギターに採用されている人気の木材

アフリカンマホガニーはネック材、トップ材、サイドバック材、どこにでも採用することができる非常に優れた材であるという事がお分かりいただけたかと思います。

ほとんどのモデルにどこかしらで採用されているため、シトカスプルースと並んで最もポピュラーな材と言えますね。

好みのギターを探すときは、重厚できらびやかな音が好きならローズウッド・サイド&バック、明るくてまとまりの良い音が好きならマホガニー・サイド&バック、を一つの指標にしてみてください。

 

 

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