
アコースティックギターのサウンドは、どの木材を使うかによって大きく変わります。特にサイドバック材(側板と裏板)は、音の広がり、奥行き、サスティーンに影響を与える重要な要素です。本記事では、さまざまな木材の特徴や音色について詳しく紹介します。
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ギターの音は樹種や材質によって変わる?
木材の種類が違えば、振動の伝わり方も異なり、結果として鳴りや音域バランスに大きな差が出ます。同じトップ材でも、サイドバックの違いで印象がガラッと変わることも。
たとえば、ローズウッド系は重厚でリッチな低音を、マホガニー系は暖かみと中音の押し出しを特徴とします。これが、木材選びがギター選びにおいていかに重要かを物語っています。
サイドバック材は音のレンジやストロングポイントを決定する!

トップ材が"音の出口"なら、サイドバック材は"響きの空間"を形作る存在です。木の密度や硬さ、導管の構造が共鳴の仕方に影響し、結果として「どの帯域がよく鳴るか」「どんな音圧で響くか」が決まります。
♪深みのある低音
インディアンローズウッド

Dalbergia latifolia の詳細
項目 | 内容 |
---|---|
主な産地 | インド、インドネシア |
木の特徴 | 赤褐色〜濃紫褐色の縞模様、美しい導管と密度の高い質感 |
気乾比重 | 約0.85 |
強度 | 高く安定性も良い |
レッドリスト取り扱い | ワシントン条約附属書II(CITES)対象 |
音色の特徴
中低音の豊かさと高域の繊細な響きが特徴。音の分離が良く、コードを弾いたときの各音の輪郭が明瞭。倍音が豊富で、長いサスティーンを伴うリッチなトーン。クラシックからモダンまで対応力があり、バランスの良さは群を抜く。
代表的なモデル
マダガスカルローズウッド(パリサンダー)

Dalbergia spp の詳細
項目 | 内容 |
主な産地 | マダガスカル |
木の特徴 | 色味と杢のバリエーションが豊富で見た目も美麗 |
気乾比重 | 約1.0 |
強度 | 高く、安定性も良好 |
レッドリスト取り扱い | ワシントン条約附属書II(CITES)対象、輸出制限あり |
音色の特徴
インディアンローズよりさらに倍音が豊富で、全体的に明瞭感が強い。音の伸びも良く、硬質な分レスポンスが速い。トーンにエレガンスと深みがあり、ソロ向けにも優秀。希少性も相まって高級ギターに多用される。
代表的なモデル
アフリカンブラックウッド

Dalbergia melanoxylon の詳細
項目 | 内容 |
主な産地 | 東アフリカ(タンザニア、モザンビーク) |
木の特徴 | 極めて重く硬い黒褐色の木材、油分も多い |
気乾比重 | 約1.20 |
強度 | 非常に高いが、脆さもある |
レッドリスト取り扱い | ワシントン条約附属書II(CITES)対象 |
音色の特徴
クラリネットやオーボエにも使われるように音響特性が非常に優れており、音の密度が非常に高い。中低音域の圧力感と高域の抜けの良さが共存し、分離の良い音像を形成。反応が速く、ダイナミックレンジが広い。プロ向けの高級機材に使用されることが多い。
代表的なモデル
- Lowden African Blackwood Series
♪ド迫力の低音だがまとまりが良くバランスに優れる
ホンジュラスローズウッド

Dalbergia stevensonii の詳細
項目 | 内容 |
主な産地 | ベリーズ、グアテマラ、ホンジュラス |
木の特徴 | 赤褐色~紫がかった色合い、深い導管と美しい杢目 |
気乾比重 | 約0.94 |
強度 | 非常に高く、寸法安定性も優秀 |
レッドリスト取り扱い | ワシントン条約附属書II(CITES)対象 |
音色の特徴
非常にリッチで厚みのあるサウンド。低音は豊かで重厚、中音域は押し出しがあり、高音も鈴鳴りのように響く。全帯域での表現力が高く、音像に立体感が出る。音の密度が高いため、録音にも向いており、プロのスタジオユースでも評価が高い。
代表的なモデル
ハカランダ

Dalbergia nigra の詳細
項目 | 内容 |
主な産地 | ブラジル(現在は伐採・輸出禁止) |
木の特徴 | 深い黒褐色の縞模様、芳香と艶のある表面、非常に希少 |
気乾比重 | 約0.87 |
強度 | 高く、経年変化で音響特性が向上する傾向あり |
レッドリスト取り扱い | ワシントン条約附属書I(CITES)対象、商業取引ほぼ不可 |
音色の特徴
「ローズウッドの王」とも呼ばれ、極めて豊かな倍音構成と圧倒的な音圧感が特徴。低音から高音までのレスポンスが早く、音の芯が明確。長いサスティーンと奥行きのある響きは他に類を見ない。現代の木材では再現困難な伝説的トーン。
代表的なモデル
- Martin D-45をはじめとする1960年代以前のローズウッド仕様モデル(ヴィンテージ)
- Taylor Brazilian Rosewood Limited
- Takamine Limited Edition Models
♪パンチがあり抜けが良い
ホンジュラスマホガニー(ジェニュインマホガニー)

Dalbergia macrophylla の詳細
項目 | 内容 |
主な産地 | 中南米(ホンジュラス、ベリーズなど) |
木の特徴 | 赤褐色〜茶褐色で年輪が明瞭。軽く柔らかめな質感 |
気乾比重 | 約0.50〜0.66 |
強度 | 中程度で加工性が良い |
レッドリスト取り扱い | ワシントン条約附属書II(CITES)対象 |
音色の特徴
中域に強く、反応が良い。ストロークでのジャキっとしたアタックが印象的で、音抜けの良さと温かみのあるトーンが共存している。ボーカル伴奏にも非常に適しており、力強いリズムを支えるのに向いている。
代表的なモデル
ビッグリーフメイプル

Acer macrophyllum の詳細
項目 | 内容 |
主な産地 | 北アメリカ西部(アメリカ、カナダ) |
木の特徴 | 明るい色合いでカーリーやフレイム杢が出やすい |
気乾比重 | 約0.50〜0.70 |
強度 | 中程度、安定性が高く反りにくい |
レッドリスト取り扱い | 対象外 |
音色の特徴
非常に明るく、シャープでタイトなサウンドが特徴。サステインは短めだが、アタックが明瞭でパンチがある。録音向きで、フィンガースタイルの輪郭を際立たせたいときに向く。
代表的なモデル
ハワイアンコア

Acacia koa の詳細
項目 | 内容 |
主な産地 | ハワイ諸島 |
木の特徴 | 金褐色の光沢とリボン杢が美しく高級感がある |
気乾比重 | 約0.64〜0.70 |
強度 | 中〜高。楽器に適した安定性と加工性をもつ |
レッドリスト取り扱い | 対象外(ただし保護管理あり) |
音色の特徴
ウォームな中域と明瞭な高域が同居したバランス型。弾き始めは少しタイトだが、弾き込むことで音が開いてくる特性がある。甘さと艶のある音色はソロ演奏や弾き語りに人気。
代表的なモデル
オーストラリアンブラックウッド

Acacia melanoxylon の詳細
項目 | 内容 |
主な産地 | オーストラリア(タスマニアなど) |
木の特徴 | 黄褐色〜濃茶色で虎杢など美しい杢が出やすい |
気乾比重 | 約0.60〜0.75 |
強度 | 中〜高。安定性が高く楽器に適する |
レッドリスト取り扱い | 対象外 |
音色の特徴
中域から高域にかけて抜けがよく、マホガニーとコアの中間的な音色。軽やかながらも芯のある音で、フィンガースタイルからストロークまで幅広く対応。音の立ち上がりが早く、明瞭で反応の良いサウンドが得られる。
代表的なモデル
ウォルナット

Juglans regia の詳細
項目 | 内容 |
主な産地 | ヨーロッパ、アメリカ西部 |
木の特徴 | 落ち着いた茶色で美しい杢が現れることも多い |
気乾比重 | 約0.55〜0.65 |
強度 | 中程度、加工性が良く安定性もある |
レッドリスト取り扱い | 対象外 |
音色の特徴
ミッドレンジが豊かで、柔らかく包み込むような音色。マホガニーよりも少し落ち着きがあり、ローズウッドよりも軽やか。独特の温かみと透明感のバランスがあり、オープンチューニングにもよく合う。
代表的なモデル
- Taylor 114ce
♪あたたかみがある
アフリカンマホガニー

Khaya ivorensis の詳細
項目 | 内容 |
主な産地 | 西アフリカ(ガーナ、カメルーンなど) |
木の特徴 | 明るい赤褐色でマホガニーに似る。木目はやや粗め |
気乾比重 | 約0.55〜0.65 |
強度 | 中程度。加工性が良く、乾燥後も安定している |
レッドリスト取り扱い | 一部地域で管理対象(CITES対象ではない) |
音色の特徴
暖かく、優しい中域の響きが魅力。倍音は控えめで素直な鳴りを持ち、歌の伴奏やフィンガースタイルに適する。オープンで丸みのあるサウンドは、耳に馴染みやすく幅広いジャンルで扱いやすい。
代表的なモデル
- Yamaha LL16M ARE
- Takamine EF340SC
- Eastman E10D
サペリ

Entandrophragma cylindricum の詳細
項目 | 内容 |
主な産地 | 中央アフリカ(コンゴ、カメルーンなど) |
木の特徴 | 赤褐色で均一な木目、光沢があり外観が美しい |
気乾比重 | 約0.60〜0.65 |
強度 | 中〜高。安定性も良く乾燥にも強い |
レッドリスト取り扱い | 一部地域で伐採規制あり(CITES対象ではない) |
音色の特徴
アフリカンマホガニーに近い音質だが、やや硬質でアタックが強め。中域が豊かで、輪郭のあるサウンドが得られる。ストロークにも強く、マホガニー系の中でもパンチのある音色が特徴。
代表的なモデル
まとめ:サイド&バック材で音のキャラクターが大きく決まるのでギター選びの際は必ず確認するようにしよう♪
トップ材とサイドバック材の組み合わせによって、ギターは無限の個性を持ちます。自分の演奏スタイルや好みに合った組み合わせを見つけることで、より音楽表現の幅が広がるはずです!