
アコースティックギター(アコギ)の音に最も大きな影響を与えるのが「トップ材(表板)」です。
実はこのトップ材、樹種によって音のキャラクターや鳴り方がガラッと変わるんです!
本記事では、そんなトップ材として人気のある木材たちを徹底解説!
それぞれの特徴、音色、代表的なモデル、レッドリストの扱いまで網羅しました。
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ギターの音は材質によって変わる?
「ギターは弾き手が鳴らすもの」と言われますが、材質が違えばまるで別の楽器かのように響きが変わります。
とくにトップ材は“音の出口”ともいえるほど重要で、
木の種類や産地、乾燥の状態によって、
- 音の立ち上がり
- 響きの深さ
- 音の輪郭
などが大きく変化します。
トップ材は”サウンドボード”とも呼ばれるアコギの花形!
トップ材は英語でSoundboard(サウンドボード)とも呼ばれます。
弦の振動を最初に受け止めて音に変える場所だからこそ、ギターの「鳴り」を決定づける一番重要なパーツです。
ここからは、実際にアコギに使われることの多い代表的な木材たちをご紹介します。
シトカスプルース

学名:Picea Sitchensis
高さが100メートル(330フィート)を超える大型の針葉樹の常緑樹で胸高幹の直径は5メートル(16フィート)を超えることもあり、スプルースの中では圧倒的に最大の種。
Picea sitchensis の詳細
項目 | 内容 |
---|---|
主な産地 | アラスカ〜カナダ西海岸、アメリカ北西部 |
木の特徴 | 真っ直ぐな木目、軽量で剛性が高い |
気乾比重 | 約 0.46 |
強度 | 非常に高く、剛性と軽さのバランスが良い |
レッドリスト取り扱い | LC(軽度懸念)※現時点では絶滅危惧ではない |
音色の特徴
クリアで伸びやかな音。音の立ち上がりが早く幅広いジャンルに対応できる【万能タイプ】
シトカスプルースはヤング率(剛性)と密度のバランスが非常に良く、高い強度を保ちながら軽量であることから、トップ材として非常に優れています。
特に「モジュラス・オブ・エラスティシティ(MOE)」が高く、ストロークプレイでも箱鳴りがしっかり得られるのが特徴です。
成長が早く、目の粗さは個体差がありますが、密な柾目が取れたものはプレミアム材として扱われます。
代表的なモデル

イングルマンスプルース

Picea engelmannii の詳細
項目 | 内容 |
---|---|
主な産地 | 北米西部、ロッキー山脈一帯 |
木の特徴 | 柔らかめで繊細な木目 |
気乾比重 | 約 0.41 |
強度 | シトカよりやや弱めだが音響特性が高い |
レッドリスト取り扱い | LC(軽度懸念) |
音色の特徴
柔らかく、繊細で甘い音。小音量でも響くので【フィンガースタイルに◎】
イングルマンはシトカより密度が低く、柔らかいため、軽いタッチでもよく鳴り、繊細な表現に向いています。
特にサステイン(音の伸び)が長いことから、ソロギターやクラシックに好まれます。
逆に、大きな音圧をかけすぎると飽和しやすいので、ハードストロークには不向きです。
カスタムビルダーの間では「エンジェルボイス」と呼ばれることもあります。
代表的なモデル

ジャーマンスプルース(ヨーロピアンスプルース)


Picea abies の詳細
項目 | 内容 |
---|---|
主な産地 | 中央ヨーロッパ(ドイツ、オーストリア、スイスなど) |
木の特徴 | 密な木目で美しい外観 |
気乾比重 | 約 0.44 |
強度 | 軽くて硬く、音響的に優れる |
レッドリスト取り扱い | LC(軽度懸念) |
音色の特徴
【鋭いレスポンスと奥行きのある鳴り】クラシックギターや高級アコギに使われる。
シトカとイングルマンの中間的な特性を持ち、バランスの良さと上品さが魅力。
年輪が細かく、音速(スピード・オブ・サウンド)が速いため音のレスポンスが非常に優れているのが特徴です。
製材時に美しく柾目が取れれば「マスターレベル材」として高級ギターに使用されます。
伝統的なクラシックギターやルシアーモデルにも好んで用いられます。
代表的なモデル

アディロンダックスプルース(レッドスプルース)


Picea rubens の詳細
項目 | 内容 |
---|---|
主な産地 | アメリカ北東部、アパラチア山脈 |
木の特徴 | 密度が高く非常に強靭 |
気乾比重 | 約 0.42 |
強度 | 4種の中で最も強くパワフル |
レッドリスト取り扱い | LC(軽度懸念) |
音色の特徴
【爆発的な音圧と豊かな倍音】ストロークやブルーグラスに最適。
アディロンダックはトップ材として最も強靭で、高いダイナミックレンジを誇ります。
力強いピッキングに耐え、大音量でも歪まずクリアに響くことから、ブルーグラス系のミュージシャンに愛用されています。
ただし材が非常に希少で高価。また、「鳴らし切る」には時間と技術が要るとも言われる“育てるトップ材”です。
代表的なモデル

レッドシダー(ウエスタンレッドシダー)


Thuja plicata の詳細
項目 | 内容 |
---|---|
主な産地 | 北アメリカ西海岸(カナダ・アメリカ北西部) |
木の特徴 | 非常に軽量で柔らかく、香りが強い |
気乾比重 | 約 0.38 |
強度 | 低めだが、振動吸収性に優れる |
レッドリスト取り扱い | LC(軽度懸念) ただし過剰伐採地域もあるため注視が必要 |
音色の特徴
【柔らかく温かみがあり、即鳴り(弾いた瞬間の音の立ち上がり)が良い】倍音が豊富で、フィンガースタイルやクラシック系プレイヤーに特に人気。
サステインも長く、やさしい響きを持つ一方で、強く弾きすぎると音が潰れる傾向も。
レッドシダーはスプルースに比べて約20%ほどヤング率が低く、音速も遅め。
そのため音の立ち上がりや倍音の豊かさには優れますが、ボリューム感やパワー感は控えめ。
しかし、指先の繊細なタッチまでしっかり音に変えてくれるため、
「音で語る」ようなプレイを目指すプレイヤーには理想的な材とも言えます。
また、乾燥や加工がしやすく木工的にも扱いやすい材ですが、傷がつきやすいため打コン対策は必須。
代表的なモデル

アフリカンマホガニー


学名:Khaya ivorensis
マダガスカルを中心とした西アフリカに分布するセンダン科アフリカマホガニー属の植物。リボン杢が出やすく、グレードの高い本物のマホガニーによく似ているため現在、マホガニーの代替材としては最も供給量が多い。
Khaya ivorensis の詳細
項目 | 内容 |
---|---|
主な産地 | 西〜中央アフリカ |
木の特徴 | シンプルな木目、軽くて加工しやすい |
気乾比重 | 約 0.46~0.80 |
強度 | 適度な硬さと粘りを持つ |
レッドリスト取り扱い | VU(絶滅危惧II類)※適切な管理が必要 |
音色の特徴
あたたかく中域が豊か。【まろやかでやさしい響き】
ホンジュラスマホガニーの代替材として広く使用されており、軽量かつ加工性が高いのが特徴。
音響的には中域にピークがあり、ボーカル帯域とぶつかりにくく、扱いやすい音色になります。
ただし音の伸び(サステイン)や粒立ちは、ジェニュインマホガニーに比べるとやや控えめ。
代表的なモデル

ホンジュラスマホガニー(ジェニュインマホガニー)


学名:Swietenia macrophylla
北米から中南米の広域に分布しているマホガニー。戦後キューバとアメリカの関係が悪化して以降、キューバン・マホガニーが入手困難となり、一気に需要が高まった木材。現在、インドネシアなどの東南アジアでも木材産業として植林も行われているため、マホガニーでは最も安価で供給量が多い。ホンジュラス原産のみワシントン条約の附属書IIに登録され生産者の検査が行われている。
Swietenia macrophylla の詳細
項目 | 内容 |
---|---|
主な産地 | 中南米(ホンジュラス、ブラジル、ペルー等) |
木の特徴 | 美しい縞模様、高級感あり |
気乾比重 | 約 0.56~0.66 |
強度 | 高い耐久性としなやかさ |
レッドリスト取り扱い | VU(絶滅危惧II類)※国際取引はCITES規制あり |
音色の特徴
【豊かな倍音と太いサウンド】高級機に使用される伝統材。
“木の王様”とも称されるクラフト材の最高峰。
振動伝達性が高く、滑らかで丸みのあるトーンを生む特性から、多くのビルダーが理想とする素材。
低中域がふくよかで、ソロでもバンドでも埋もれない「芯のある音」が出せます。
入手困難かつCITES対象で、近年はサステナブルな代替材へのシフトが進んでいます。
代表的なモデル
現在ホンジュラスマホガニーをトップ材として使用していることを明記している、ご紹介できる代表的なモデルがありません。カスタムモデルが圧倒的に多く、プロパーで安定して供給されているギターが非常に少ないためです。随時更新いたしますのでいましばらくお待ちくださいませ。
ハワイアンコア


Acacia koa の詳細
項目 | 内容 |
---|---|
主な産地 | ハワイ諸島 |
木の特徴 | 美しく光る杢が特徴的 |
気乾比重 | 約 0.64~0.70 |
強度 | 中程度で弾力性がある |
レッドリスト取り扱い | LC(軽度懸念)だが資源は限られている |
音色の特徴
中高音域がきらびやか。【やや硬質でウッディな個性を持つ】
密度と音響特性のバランスに優れた広葉樹材。
固さがあるため高音域のレスポンスが鋭く、ピッキングに対する反応が非常にナチュラル。
ハワイ独特の湿潤な気候で育つため木目が複雑で美しく、視覚的な魅力も抜群。
ただし硬めで加工難度が高く、反りのリスクがあるため、扱いには熟練が求められます。
代表的なモデル

まとめ:トップ材で音の方向性が大きく決まるのでギター選びの際は必ず確認するようにしよう♪
「見た目」だけで選ぶのはもったいない!
トップ材によって、ギターの性格はまるで別物になります。
- 明るく鳴るシトカスプルース
- 優しく響くイングルマン
- パワー重視ならアディロンダック
- あたたかみを求めるならマホガニーやコア
ぜひ、あなたの音楽スタイルに合った木材を見つけて、ギター選びをもっと楽しくしてくださいね♪