雑記

1970年代のMartinを「安易に」買わない方がいい理由

ギタリストならば全員が憧れるブランド、Martin。国内で特に人気の高いドレッドノートやOOO(トリプルオー/オーディトリアム)のオリジナルを生み出した伝説的ブランドです。

ヴィンテージは特に高額で取引されており、数年前と比べて1970年代のモデルも徐々に金額が上がってきているように感じます。

しかし、歴史が長いからこそ各年代のモデルにクセがあるというのはご存知でしょうか?

今回は絶対に知っておいた方がいい1970年代のMartinの特性を記事にしておきたいと思います。

この記事はこんな人におすすめ

  • ヴィンテージギターが好き
  • ヴィンテージに興味がある
  • 中古のMartinギターを検討している

70年代は安易に買わない方がいい

結論から言ってしまうとこうです。ただそうは言っても、ほとんどの楽器店やサイトで注意書きはされていませんし、一体何がいけないのか分からないという人も多いですよね。私も欠点を知らずに販売していた時期があり、実際に1970年代のMartinを持っている本人ですらも認知していない欠点があるのです。まずは特徴から見ていきましょう。

特徴

ハカランダに代わって良質なインディアンローズウッドを使用されている

1960年代以前は、ローズウッドといえばハカランダ(ブラジリアンローズウッド)が使われていました。なので28系なんかは贅沢にもサイドバックに使われているものですから、価格が急に高くなっているんですね。18系もブリッジや指板に使っているので美しい木目を拝むことができます。

1970年代に入ってから、インディアンローズウッドになるのですが、良いものから先に使っているのか当時のローズは本当に魅力的な木目のものが多く、ハカランダとみまごうほど美しい色目を出した個体も遭遇したことがあります。

生産数が多い

Martinのシリアルナンバーは通し番号で管理されており、Martin Club Japanのページを見るとその年に作られた最終シリアルナンバーが分かります。全てが出荷されているとは限らないので正確ではないと思いますが、シリアルから導き出した1960年代の推定生産数は84,956本、それに対して1970年代はなんと倍近い163,897本ということになります。

ちなみに、大規模なリストラがあった1980年代は73,379本の生産本数と激減していますがその分腕のいい職人が少数精鋭で作っていたとされていて、1990年代のMartinよりも精度が高いです(1990年代はネックの塗装がベタベタしてしまう特徴があります…)。

ネック調整不可のスクエアロッド

Martinが現代のようなアジャスタブルロッドを採用したのは1980年代以降。それ以前のモデルは全て気軽にネックが調整できるようなものではありません。しかし、これが問題なのであればヴィンテージMartinの価格がここまで高騰することはありませんし、このスクエアロッド、アジャスタブルにする必要がないくらい頑丈です。70年代の本当の問題点は次の1点です。

ピッチ(音程)が合わない

これが今回の記事のタイトルにしている問題点なんです。1970年代のMartinをお持ちの方で気付いていない方は是非やってみてください。0Fと12Fの音、チューナーの針はちゃんと真ん中で合ってますでしょうか?合ってれば大丈夫なのですが・・・私が確認している限りでD-28,D-18,D-35はこの年式だとほぼ全てフラットしてしまい、ちょっとだけチョーキングするとピッタリ合いました。

この原因なんですが、おそらく大量生産体制になったタイミングでフレッティングとスケールの計測にミスがあったと思われます。フレットの感覚に対して1〜3mmスケールが短いために開放弦よりもオクターブの音がわずかにフラットします。

冒頭で、私も知らずに販売した経験があると言いましたが、これが何故気付きにくいのか?弾き語り等ソロで弾いている分にはほとんど気付かないレベルなのです。しかしピアノ等他の楽器と合わせる時にどう弾いても響きが気持ち悪くなってしまいます。原因を探ると、この問題点が見つかった、というわけです。

解決方法

「えー…ヴィンテージギターなのに欠点持ちなのか…」と思ったあなたに朗報です。きちんとプロの手が入っている個体は何の問題もなくオクターブが合います。つまり、リペアすれば問題はないのです。

最もポピュラーな調整は今付いているブリッジを剥がし、新たにブリッジを数mm大きめに作り、それに合わせてサドルの位置を下げてやる方法。音程を上げるにはテンションを上げる、テンションを上げるには弦長を伸ばす必要があるためです。

通常のブリッジ交換に比べて多少高く付くかもしれませんが、見た目も言われたら気づく程度で特に違和感はないはずです。

きちんと見て聞いてから買うべし

1970年代のMartinが魅力的なヴィンテージであることは間違いありません。既に調整が入っている個体もありますし、私が実際にこの耳で確認してダメだったのはドレッドノートのスケールのみです。他のは検証していませんのでもしかすると何も問題はないかもしれません。他の楽器とのアンサンブルをする可能性がある方は、必ず買う前に店員さんにオクターブは合うかどうか確認してから買いましょう。

なにか分からないことがあればお問い合わせから何でも聞いてくださいね!それでは皆様、引き続き良いアコギライフを!

 

 

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